紅茶珈琲の白煙をかき消すベルの音を叩いて早150年。
大西洋に歌うセイレーンのような指で摘まれ、そよ風のエアリエルをふるわせ鳴り響く呼び鈴の歌声を、私はいまだ聞いたことがない。
どんなに見目麗しい人がウエイターに向かってリンリンとベルを鳴らしても、和紙のような空気に満たされたこの国では、猫の首輪の鈴の音にしか聞こえない。
だらしない飼い主の家から、堂々と外へ闊歩していくお猫さまのお通りだにゃといたずらに鈴の音が、150年以上前から私の遺伝子の中で鳴り響いている。
(241220 ベルの音)
12/20/2024, 1:04:17 PM