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星空が綺麗な夜だった。風は草木を撫でて優しく揺らしている。一面に広がる草原の中、少し目立つ丘の上に風に当たる人?がいた。
「当初の目的は達成されたよ。魔女狩りに、ちと喧嘩を振って、弟子を旅に出す。しかも最高の器の中でね。いやぁ〜我ながらに完璧な出だしと思うよ。」
その声は女性だった。しかし女性にしては背が高く、声は蛇のように絡みつくようだ。
「魔女。それは今や世界共通の敵。奴らが与えた被害は数知れず。」
そう言ってしゃがみ、風と共に草を撫でた。優しく、傷つけないように。
「奴らは数々の村を焼き払い、多くの命を奪った。」
一つの花に手を伸ばし、優しく撫でた後茎からちぎった。それを眺めては夜空に放った。
「まぁ、いずれ気づくさ。それに….」
立ち上がって前へ進む。目の前には大きな月が昇って彼女を包み込んでいた。月光は皆を平等に照らす。
「世界にどれほど嫌われようとも、私の思いは変わらない。」
月に手を伸ばす。今にも届きそうな距離だ。
「私達はいつまでもこの世界を愛している。何があっても。……そうだろう?」
そう言って振り向く。そこには一本の白い十字架が突き刺さっていた。

6/12/2025, 11:02:50 AM