144.『お金より大事なもの』『過ぎ去った日々』『愛と平和』
「世界一大事な物?
やっぱ金でしよ!」
言い切って、すぐに『しまった』と後悔する。
何気ない雑談で、口をついて出てしまった言葉。
けれど過ぎ去った日々が戻らないように、言ってしまった言葉はもう取り消せない。
私の言葉を聞いた人々は、空いた口が塞がらなないとばかりに、私を見つめていた。
どうしてこうなった。
選ばれたセレブだけが集まるパーティで、カクテルをくゆらすだけの簡単なお仕事だったのに、まさかこんな下品な発言をしてしまうなんて……
他に人が『家族』や『平和』と言っている中、私だけが『金』と答える。
その場にいた全員は、非難めいた目線で私を見る。
なんとか取り繕う必要があると思ったが、何も頭に思い浮かばない。
どうしよう……
あわあわと慌てていると、見かねたのか初老の男性が一歩前に出た。
「『お金が大事』、良いではありませんか。
お金があれば、たいていの事は出来ますからな。
ミズキさんは苦労されていますから、なおさらそう思うのでしょう」
こんな小娘の発言なんて一笑に付せばいいのに、穏やかな笑顔で私をフォローするご老人。
これこそ徳というものなのだろう。
打算なく助けてくれる人には、感謝しかない。
心の中で、私はおじいちゃんに礼を言った。
けれど、それに納得いかない者がいた。
男性の孫で、10代前半少年が、険しい顔で一歩前に出た。
「お爺様、甘やかし過ぎです。
この世界には、お金より大切なものがたくさんあります。
コイツの場合、ただの守銭奴ですよ」
そう言って、キッと睨みつける彼。
親の仇を見るような鋭い目線に、私は居たたまれない気持ちになった。
とはいえ、少年の気持ちもよくわかる。
いくら本音とはいえ、パーティで『お金が一番』とか言い出す奴は、おかしい奴扱いされても仕方がない。
こういう時は『愛と平和』と言うのが定番だし、私もそう言いたかった。
けれど、少しばかり私の口が軽かったばかりに、悲劇が起こってしまった。
「彼女はこの場にふさわしくありません。
パーティーから追い出すべきです!」
よほど私のことが気に入らないらしい。
鼻息を荒くしながら、自らの祖父に進言する。
『同意が得られなければ力づくでも追い出す』。
彼の顔には、そう書かれていた。
けれど、ここまで言われれば、私も黙っていられない。
確かに全ての責任は私にある。
でも、そこまで言うことは無いじゃないか!
誰しも失敗はある。
それを許せるかどうかが人の器を決めると思っている。
この少年は若いがゆえに、悪は全て撲滅せねばならぬと考えているに違いない。
でも、それだけでは社会は成り立たない。
私が、少しばかり教えてあげようではないか。
「あら、お金に執着することは、そんなに悪いのかしら?」
「何だって!?」
少年は険しい表情のまま、こちらに振り向いた。
怒りに満ちた顔をしているが、いかんせん若いので、怖いより可愛いが先に来る。
この顔を歪ませることができると思っと……
げへへ、少し興奮する。
「お金が無ければ何もできません。
お金があってこそ、我々の裕福な生活が保障されているのです。
それが分からないのですか?」
「確かに、裕福な生活にはお金が必要だ。
でもそれが全てではありません。
愛と平和、それが無ければお金は無価値だ!」
何という青臭い
豪華な食事、綺麗な服、たくさんの使用人。
どれもがタダなどではなく、お金を支払う必要があります」
「そんな事分かつて……」
「いえ、分かっていません」
「あなたが着ている服だってそうよ。
お金を出して買っているものなの!
どこからか湧いて出てきたものではないわ」
少年はたじろぐ。
「あなたは若いから分からないでしょうが、」
「カッーーーーーート。
撮影は中止、みんな休憩してね。
……瑞希ちゃん以外は」
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「瑞希ちゃ〜ん、なんで正座されられているか分かる?」
「美しすぎることが罪だから、かな?」
「そんなわけないでしょ!
なによ、『』
本当のことでも、言ってダメなことあるよね、」
「あと、孫役の子。
最後の方、少し泣いてたからね。
後で謝りなさいよ。
――って気持ち悪いわね。
何よ、ニヤニヤしてさ」
「ふふふ、実はあの子、私の好みでして。
言葉攻めして、ちょっと興奮したね」
あんた……
ドン引きしていた
「お金より大切無ものないかもしれないけどさ。
品性はお金じゃ買えないのよ」
3/16/2026, 1:10:55 PM