冷たい空っぽのタンブラーと、それからカフェの回数券。それらを私に差し出して、大男の彼はにこりと笑った。鼻と耳は赤く、外の寒さがうかがえる。
「いつものですか?」
彼はさらににっこり笑ってうなずく。
私は回数券をもぎる。
一枚一枚デザインが違うその回数券は、今はクリスマス仕様になっている。今日は赤いマフラーがリボンのように踊っていて、その両端には雪だるまが。二人で一本のマフラーをシェアしている。
マフラーの真ん中からちぎって、一方は店の、もう一方は彼の控えとなる。
ひんやりと冷たいタンブラーに、エスプレッソを注いでお湯で割る。
寒い冬には熱々のアメリカーノがよく合う。
【お題:愛を注いで】
12/13/2024, 1:25:09 PM