あるまじろまんじろう

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 バスタブの中に死が眠っていた。
 意味ありげに言い回しを気取った比喩ではない。一般的な心臓、肺、脳によって支えられている、生命維持の不可逆的な停止を指すあれのことではなく、四角い浴槽に背中を丸めて目を瞑る少年の名前が死であった。
 死と共に暮らし始めて分かったことがある。死は極まって民族的嗜好で生き物を好いていた。街中に繰り出しては主人の隣を闊歩する犬を、死はいつも眩しそうに眺めるのだ。


透明な涙

1/17/2025, 1:03:28 AM