「止めろよ」
触ってみようと手を伸ばす佐藤を小声で注意した。だが、佐藤の気持ちも理解はできた。ケースに入れられているとはいえ、目の前でピカピカに磨かれたフィギュアは俺たちのようなオタクにとっては、触らずにいられない。まして、今回の展示は年に一回の貴重な機会だ。
展示場に着いて今回の目玉を拝んだ時は、心の中に嵐が吹き荒れたものだ。息を飲むことしかできなかったのだった。畏怖の感情さえ沸き起こってきそうだ。アニメで何度も見たものが、細かなバッジに至るまで細部を妥協することなく作り込んでいる。
(来て良かった)
腹の中で思った。
佐藤は眉間にシワを寄せて、フィギュアに釘付けになっていた。
4/12/2023, 12:42:29 AM