蝉の声がする。茹だるような暑さに、滝のように噴きでて顔や服や地を濡らす汗。気が遠くなりそうだ。じめじめとした空気が余計気持ち悪い。こんな気象、いつまで続くのだろう。7月の中旬にも関わらず、僕はうんざりしていた。
赤い夕陽に向かって歩むのも、そろそろやめにしないか。熱中症になって死んでしまいそうだ。それに、夜は間近。休憩する頃合いだ。
「疲れたな…」
こんな旅、早く終わればいいのに。
悪態をつきながら公園のベンチに横たわる。居場所を求め、猛暑を泳ぐ日々への疲労は、この固い木では癒せない。
古びた灯に小さな羽虫が群がっている。蝉の煩い声が鼓膜を震わす。星は見えない。ただ飛行機の光を見つけた。日が落ちても涼しくはなく、汗は滲む。今日は新月のようだ。こんなに晴れているのに月光さえも浴びられないとは。誰かの騒ぐ声。酒瓶の割れる音。なにかの破裂音。叫び声、うめき声。こちらに、近付いてくる足音。
果たしてそんな夏を、望んだだろうか。
十三作目「夏」
曖昧は夏はさほど好きではない。暑いのが嫌いだ。かと言って、寒いのも嫌い。最近は温度差で風邪を引いて、声が満足に出せないのが辛かった。皆様も、体調には気をつけてください。
7/14/2025, 11:11:58 AM