オカルト。地縛霊と少女。444字。
『踏切の地縛霊』
おい……また来たのかよ。いいか? この踏切はな俺のショバだ。『踏切の地縛霊』は二人もいらねぇんだよ。どれ、今日も飛び込む気が失せるような轢死体の話を……。
しなくていい? 転校が決まった? そうかそうか、これでそのシケたツラ見なくてすむぜ。良かったな!
でも、転校先でもイジメられそうで怖い? ……解った、ちょっと髪一本寄越しな。これをこうして、線路の上に置く。で、下がってな。ほら、列車が通り過ぎた。これで、昨日までのお前は死んだ。さよならだ。明日は明日の新しいお前に出会える。いいな。
おっ。……いや、お前笑うと結構可愛いんだな。うん、その笑顔ならもう大丈夫だ。あん? 俺もいい加減、成仏しろ? 余計なお世話だ。二度と、こんなとこ来るんじゃねぇぞ!
カンカンカン……。春の陽の中、降りる遮断機に中学生のときを思い出す。
イジメで自殺すら考えたとき、救ってくれた奇妙な少年の地縛霊。
「お母さん! 列車!」
「うん。カッコイイね」
遮断機が上がる。どこか彼の面影のある息子の手を引き、私は踏切向こうの公園に向かった。
お題「昨日へのさよなら、明日との出会い」
5/22/2023, 12:20:34 PM