僕らの目の前には、大きな大きな、一本のつららがあった。
「つららって、どんな味するん?」
「えー、水だし、味とかないんじゃない?」
「じゃあ、砂糖かけたら美味しいかな」
「いや、水に砂糖入れても対して美味しくなくない?」
「ん〜、じゃあシロップとかかける?かき氷の」
「それならもう、普通に削ってかき氷にしたらいいじゃん」
つららは、ちょうど背を伸ばしたら、そのさきっぽに指先が届くかどうかという高さにある。
「でもこれ、そもそも取れなくない?」
「大丈夫だよ。ほら、こうやって…えいっ」
「おぉ〜、………全然ダメじゃん、ノーコンピッチャー」
「だって、高すぎて狙いづらいんだよ〜」
「ほら、こうやってやるんだよ…ほいっ」
「おおっ!………あぁ~、当たったけど、全然ビクともしやいね」
「ちょっと大きすぎるなー。石でも当てないと折れないんじゃないか」
「えー、石はやめようよ。なんか美味しくなさそうだし」
「そんなに食べたい?」
そうこうしているうちに、太陽は頂点を通り過ぎようとする。雲ひとつない、快晴。
「あ。なんか光ってない?」
「どれどれ、どこが?………あ、なんか濡れてきてる?」
「みてみて!さきっぽに貯まっていく!」
「これなら、もうちょっとしたら壊せるようになるんじゃ、っておい!なにしてんの!?」
「あ〜〜〜、んっ」
綺麗な、綺麗な、一粒の雫が、口の中に吸い込まれていく。ナイスキャッチ。
「おまえ、お腹壊しても知らないよ〜」
「大丈夫、大丈夫、だって冷たくて美味しいよ!」
「なんだ、それ」
まっさらの純情な雪が、すっきりと澄み渡った空が、しっとりと艷やかなつららが。
僕たちの日常に、とけ込んでゆく。
4/21/2024, 11:53:51 AM