小鳥の鳴きかわす声が聞こえる。
草木がさわさわと身じろぎをする。
がさっ、っと茂みが動く。
天井のある建物の中で寝るよりも、晴れ渡ったまっさおな青空の下で寝るほうがずっと気持ちがいい。
人工的な建物の、蛍光灯に睨まれて眠るよりも、明るく暖かい太陽の光を、これでもかと吸収して阻む、木の葉たちに睨まれて眠るほうが、ずっと気持ちがいい。
だから、外へ出たのだ。
静かなる森へ、こっそり、堂々と。
丈夫な縄と遺書の準備は出来ている。
したいことリストを書いた手帳も忘れていない。
覚悟もできた。
準備は万端だ。
永遠の眠りにつく準備は。
種類の分からない鳥が、ぎゃあぎゃあと騒いでいる。
青空が、木々の隙間から、水色の顔をのぞかせる。
姿すら見えない動物が、ガサゴソと動く音が聞こえる。
木の葉の隙間から、太陽の光が細く伸びている。
静かな、静かなる森だ。
ここで、私は死ぬ。
無機質な病室や、帰れてないばかりに雑多で静かな自宅より、ここで眠るほうがずっと気持ちがいい。
だから。
太い枝をほこる、丈夫そうな木を探して歩く。
陽の光を一身に受けて、明るくどっしりとした木を探して。
私は、最期の眠りにつくための場所を探して、静かなる森へ進む。
鳥が鳴き交わしている。
気配を潜めているはずの、動物の気配さえも感じられる。
木々がザワザワと噂話をしている。
今日は、晴天だ。
青い青い空が、木々の向こうにきっとある。
5/11/2025, 1:06:31 AM