『この迷路を抜けて脱出せよ』
目の前の看板にはそう書かれていた。
いつの間にか私は迷路の真ん中にいて、曲がりくねった道が四方八方に伸びていた。
どちらに行けばいいかわからず、その場に蹲る。
小さな声で「助けて」と呟いたところで、誰も気付かない。ここには私だけ。
徐々に、このままでもいい気がしてきた。このままずっとここに、誰にも会わずに、このまま。
わかっていた。この迷路が、今の私を表しているものだと。たくさんの迷いが、誰にも心を開きたくない思いが、私をここに閉じ込めている。
この先に出口があるのかすらわからない。でもどうせ出たくないから、私はこのままここで眠り続ける。
目の前にあった看板はいつの間にか朽ち果てて、もう何も読むこともできない。脱出は叶わない。
『心の迷路』
11/12/2025, 10:33:33 PM