『二人ぼっち』
謎の空間に閉じ込められた
悪役令嬢とメインヒロイン。
『××しないと出られない部屋』
扉の上に掲げられた看板には
そう書かれてあった。
びくともしない扉を前に悪戦苦闘する
悪役令嬢と、はしゃいだ様子で部屋中を
探索して回るメインヒロイン。
「ねえ、きてきて!おっきなお風呂があるよ!」
彼女に手を引かれて行った先には新品のように
綺麗なバスルームがあった。
ここはキッチンやトイレまでもが設備されており、
キッチンには野菜や果物、パンやチーズや卵、
保存用の肉に魚、調味料や香辛料が置いてあった。
「ここで暮らせそうだね!」
声を弾ませて話す彼女に悪役令嬢は頭を抱えた。
それから彼女達は、用意してあった食材でごはんを
作って食べたり、一緒に泡風呂に入ったりした。
キングサイズのベッドの上で横になる二人。
(セバスチャンはどうしてるかしら…。
私が突然いなくなって、きっと心配してますわ)
隣でメインヒロインがモゾモゾと動いている。
「あら、あなたまだ起きていらしたの」
「えへへ、なんだか楽しくて」
「楽しい?」
「うん。友達の家にお泊まりしに来てるみたいで」
「呑気ですわね~。一生ここから
出られなかったらどうしますの?」
短い沈黙のあと、彼女が囁いた。
「あのさ、さっき看板に書かれてた事
試してみない?」
悪役令嬢はその言葉を聞いて飛び上がった。
「あなた、本気で言ってます?」
「うん、……貴女とならわたし、
してみたいなって思ってたの」
くっ、私が男性ならば
イチコロで参っていた事でしょう。
ですが、彼女がそうおっしゃるのならば、
私も覚悟を決めねばなりません。
「お、お覚悟はよろしくて……?」
「はい……」
悪役令嬢は彼女の顎をクイッと持ち上げ、
青い瞳を見つめた。
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目の前でお父様がラーメンを啜っている。
「な、なんですのっ?!」
状況がわからず、悪役令嬢は辺りを見回した。
先程までいた部屋も、メインヒロインの姿も
どこにも見当たらない。
「今まで見ていた光景は?」
「ここは、深層心理で強く意識する相手を
映し出す空間。つまりお前はずっと
幻と対話しておったのだ」
「なっ?!ま、幻……?」
「左様。それに気付かぬとは、まだまだ
修行が足りていないようだな。我が娘よ」
父から告げられた真実に打ちひしがられ、
その場に蹲る悪役令嬢。
深層心理で強く意識する相手を映し出す……。
彼女が?まさか!ありえない!
……いえ、ありえますわ。
きっと私の悪役令嬢としての血が、細胞レベルで
メインヒロインを憎み、妬み、嫌悪しているのだ。
そうに違いない。
悪役令嬢は心の中で、
メインヒロインに対して闘志を燃やした。
待っていなさい、あなたを倒すのはこの私です。
※××→決闘(デュエル)
3/21/2024, 12:00:06 PM