初夕 紺

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たった一つの希望

 君のことだよ。ハル。
 希望って、まだ掴めていないものを言うんだ、そうでしょ。君は僕を友達って呼んでくれるけど、実は僕、まだ信じきれてないんだ。君はいつでも優しくて、いい人で、綺麗な心を持ってるよね。僕のそばにいて汚れるどころか、僕の淀んだ心すら洗ってくれるの。でも時々不安になるんだ。本当に死ぬまでそばにいてくれるのかなって。だって、僕が寿命で死ぬまであと八十年はあるんだよ。その間に君は大人になって、今の考え方も生き方も変わっていってしまうだろう。そうやってまともになった君に僕、捨てられちゃったらどうすればいいの? 例えばそのまま野垂れ死ねたらどんなに素敵かわかんないよね。でもそんな簡単にできるなら、僕は既に地獄の底だ。怖い、死にたくないよ。君、本当に僕のこと裏切るつもり? だとしたら、とにかく早くしてくれないかな。僕馬鹿だから、いつ君のこと信用してしまうかもわからないから、もう近づかないで欲しい、本当に怖いの、僕のこと嫌いになってもいいからどうか希望を持たせないで、どうせ君もみんなと同じなら、僕を一人ぼっちのままにさせて……

 話変わるんだけど、たった一つの希望って怖いよね。何がって、たった一つってところがさ。試験を受けるときだって必ず滑り止めを用意するでしょ。希望が一つしかなかったら、消えたときにお先真っ暗になっちゃうもんね。
 この流れでこんな事言うの、結構重く感じちゃうかもしれないんだけど。あのねハル、君は僕にとってたった一人の友達、希望なんだ。君の言う事何でも聞くよ。毎日宿題するし、絶対遅刻しない。君が嫌ってる「悲観的な妄言」だって口が裂けても言わない。だからさ、一生友達のままでいて。一人ぼっちになんてさせないでよ。

3/2/2024, 3:16:14 PM