「好きだよ」愛しい人からそんな言葉が出る。「……いつも言ってるけど、その嘘止めて」私がそう告げれば、彼女は愛おしそうに頬を緩めていた表情から、意地悪そうに口を歪めた表情に変わる。「え〜騙されてくれたっていいのに」「タチ悪い」「ふふ、いいじゃん。嘘でも言われて嬉しいでしょ?」一瞬、言葉が止まる。けれどすぐに、不自然ではないような口調で続けた。「嘘だったら尚のこと嬉しくないよ」「うーん、価値観の違いかぁ」「そうじゃない?」ほら、早く帰ろ、と彼女の表情を見ずに帰路へと着く。私の視線が逸れた先で、彼女がどんな表情をしていたかなんて、わからない。私の心に渦巻く感情を、彼女は知らない。どこまでもすれ違う関係にいつ終止符が打たれるのか。誰にだって、わからない。
4/6/2025, 1:22:23 AM