いず子。

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花占いをする子なんて初めて見た。僕は最初、君を女の子だと思っていた。でも花弁をちぎる指をよく見ると、男のものだと分かった。


やがて低い声で「好き、嫌い」と聞こえてきた。その言葉を大事そうに吐き捨てる。「……〝嫌い〟?」消え入るような声が空気になじむ。


何も言えなくて、風と草原の声と遠くで飛ぶ雲だけが、子供のごとく、この止まったような時間を動かす。


僕は立ち去る。この空間は変に心地よくて、家に帰りたくなかった。ずっといたい気持ちだ。だが、今は1人にしておいた方がいい。そう思った。


もし待ち続ければ、空にオレンジジュースがこぼれてくだろう。


キャッキャと遊ぶ風を置いて、僕は家路に着いた。ああ君が嫌いになったかもしれない。いや、さっき嫌いになった。誰かを思って泣く君が嫌いだ。僕を思う君も嫌いだ。




<好き嫌い>6.12
No.14

6/12/2023, 12:20:33 PM