「いつからアイツのこと好きだったんですか?」
「バカ、あからさまに態度から好きが滲み出てただろ。先輩は無意識だったかもしれねえけど……」
いつものように飲み会に誘われ、「絶対に参加してくださいね」と後輩に釘を刺されたことに若干の嫌な予感を感じつつも酒は飲みたかった。だから参加した。
乾杯し、約五分後ぐらいに後輩たちは俺にそんな問いを投げかけてきた。
「そう……だったか?」
「そうだよ。本当に鈍感だな。だからお前、彼女できねえんだよ」
「それを言われたら、なんも言えねえ……」
酒もまだ全然入っていないのに盛り上がっている後輩たち。
「いつから好きって自覚したの?」
そのまま別の話題へそれてしまえ。
そう願ったが、俺の隣に座っている同僚がニコニコと笑いながら問いを投げかけてくる。
「お前はそんなこと聞かなくても分かってるだろ」
睨みつけてみるが、笑顔で見つめられるだけだった。
付き合いが長いこの同僚には相談することも多々あったし、逆に始めは向こうから「あの子のこと好きなんでしょう?」と言われたぐらいだ。
「そう! それそれ! それですよ! 俺はそれが聞きたかったんです! いつから好きだったんですか?」
再び嬉々とした目で後輩たちは食いつくように俺に問う。
横目で彼女の様子を窺う。
少し離れたところに座っている彼女も俺と同じように同僚、後輩、先輩に囲まれていた。
「どこが好きなの?」
「いつから好きなの?」
「告白は何て言われたの?」
「キスはもうした?」
そんな声が聞こえてくる。
そっちもそっちで俺と同じように周りから俺たちのことを問われているらしい。
こっちより踏み込んでいる問いに酒もまだ大して飲んでないのに頭痛がしてきた。
(絶対に参加しろ、と言っていたのはこれが理由か……)
跳ねる心臓を抑え込むように酒を煽る。
俺たちが何か答えない限り――いや、正直に答えたとしても周りの気が済むまでこの問は終わらないのだろう。
――終わらない問い
10/26/2025, 9:09:58 PM