うみ

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 ――何年でも待ち続けよう。


 一月、一年のはじまりから熱を出してしまいました。ここしばらく上手に眠れていないことがたたった、と少し怒られました。

 二月、雪だるまの作り方を私はまだ知らないでいます。はじめて触る雪は想像よりずっと冷たくて、十秒も遊んでいられませんでした。

 三月、窓のそばに見慣れない淡いピンク色の花が咲きました。あっという間に散ってしまって、ああ、押し花にでもしておけば良かった。

 四月、隣のお家の女の子が学び舎でもらったという教材を見せてくれます。素敵な学友と先生に恵まれて、楽しく過ごせますように。

 五月、いつからかお庭に生えたミントが手をつけられないほど茂っています。この家までぜんぶ覆われてしまいそうな勢いです。

 六月、この季節は雨が続きますね。あの日は雨ではなくて雪が降っていて、不思議ですね、雨の方が雪よりも冷たく感じるなんて。

 七月、昨日から急に暑くなって、少し置いておいたコップが汗をかくほどです。日差しが強いせいで、今日は外に出られませんでした。

 八月、友人が水分補給にと不思議な果物を持ってきてくれました。皮は黒と緑の模様なのに中は真っ赤で、とても甘いんですよ。

 九月、今夜の月はいつもよりずっと大きく美しく見えます。……月がきれいですね、なんて伝えたい相手はもう居ないというのに。

 十月、朝と昼の気温差が激しいせいか、体調を崩しがちになりました。今日も朝から頭痛がして、大人しく窓の外の紅葉を眺めています。

 十一月、街に出かけると並木の葉がほとんど散っていました。少し前まであんなに色とりどりの葉をつけていたのに、いつの間にか。

 十二月、北の方では初雪が見られたそうです。あなたを失った季節だというのに、街は生誕祭の準備でこわいほど賑やかでした。










 十三月、あなたとの約束を守ってちゃんとしあわせに暮らしています。私が天寿を全うしてあなたのところに行くまで、待っていてくださいね。



(1年を振り返る)

12/30/2024, 12:06:37 PM