まにこ

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いつも何かに追われているような気がしていた。若しくは潰されそうになる感覚。
一体俺は何と戦っているんだろう。
ひたすら弱者が搾取され、強者がそれを我が物顔で踏み躙る世の構造。
だから俺は力が欲しかった。早く完全な姿になりたかった。
でも本当は違った。そこに求めているものは無いし、そもそもそんなものを求めていること自体が本来の自分では無かった。
それを優しく教えてくれた相棒。
不完全な僕のままでいい、そこに人間の本質がある。
見えるものだけに縋る必要なぞ無かったんだ。
「……ありがとな」
聞こえるか聞こえないかくらいの声量。いや聞こえてなくったって構わない。
僕は自分よりも亭亭たるその背中に、感謝の気持ちを込めてそっと手を回した。

9/1/2024, 12:00:50 AM