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時たま届く手紙には、いつも花の香りが滲んでいた。

梅から桜に、ひまわりから金木犀
もうそんな季節かと、コーヒーを飲みながら便箋から漂う旅の文字に浸るのが常だった。


久方ぶりに来た手紙には、めずらしく消印がなかった
会っていけばいいのにと封を開けて、中から文香が滑り落ちた。
普段使わない文香、らしくない季節外れの花


ゆると立ち昇る
都わすれの香りがした。


手紙を開くと

5/6/2025, 5:35:03 AM