向かい合わせ。
僕は、ひと言多いとよく、怒られた
目を見て話せと叩かれた
なんだその目はと叩かれた
何をしても、しなくても。
王様の耳はロバの耳
僕にとっての井戸は、自室の壁。
おでこを当てて自責の念仏
不思議と落ち着くから習慣になった。
ある時ふと、おでこを当てる場所が
黒ずんできた事に気付いた。
数年経つ頃には、もう一人の僕になった。
名前をつけた、カイリ
僕の病名と同じ名前にした。
カイリはいつも黙って僕の話を聞いた。
いつも最初は冷たいが、離れる頃には暖かく
ずっと離れたくないと毎回名残惜しんだ。
ある日、カイリにくっついた時
カイリは最初から暖かかった
顔の所が濡れていた、カイリ
泣いてるの?
数日後、僕が出かけている間に
カイリは居なくなっていた。
僕の自室の茶色の壁は、真っ白な壁に
変わっていた、サラサラで最初から少し
暖かい、でもカイリが居ない。
真っ白な壁にするのにお金が掛かったと
僕は髪を捕まれ、平手打ちされた
助けてカイリ。
夜、泣いていた僕の所にカイリがきた。
僕は泣きながらカイリと話した。
わかった、カイリ。
王様は、いらない。
そうだよね。
僕の部屋は真っ白な壁。
でも僕には、カイリが見えていた。
だからいつも向かい合わせで
ずっとおしゃべりを楽しんだ。
お薬を飲むとカイリが悲しんだ
僕も悲しいから、いつもこっそり吐いていた。
カイリが微笑んだ、僕も微笑んだ。
2人はいつも、向かい合わせ。
8/25/2024, 11:33:08 AM