ミミッキュ

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"秋恋"

 CRに向かう途中、少し強い突風が吹いた。少し前まで吹いていた風よりも冷たく、ブルリ、と身震いする。肌寒くなってきて『そろそろ木々が色づく頃だなぁ…』と考えていると、ふと思い出した。
「そういえばあいつと出会ったの、今位の時期だったな…」
 当時を思い出しても、まさか今の関係になっているなんて、傍から見ても驚かれるだろう。自分達が一番驚いているのだから。当時の荒みっぷり一触即発さといったらもう…、まるで子ども…。
「ハァ…」
 と、半分笑い半分呆れの声が漏れる。お互い譲れない、というような言い合いで、今思えば本当に子どもの喧嘩の様。
 けれど、あの時期があったからこそ、お互いの考え方や、何にどう感じるのかが手に取るように分かって、あの時期が無ければこんな関係にまで発展していなかっただろう。
 全ての事は繋がっている。無駄な事なんて何も無い。
 無駄だと思っていても、いずれ大事な事柄になって帰ってきたりする。それを知ったのはつい最近で、俺が人に言える事では無いけれども。知ってからは《今》を大切に抱きながら生きようと決めた。いつかそれが、何らかの形となって帰ってくるのだから。
「…フゥ」
 息を吐き、気合いを入れて向き直る。ザッ、と地面をしっかり踏みしめる様に一歩一歩大切に、歩き始める。

9/21/2023, 10:46:32 AM