永遠に広がるかのように思える、果ての見えない花畑。
それを一瞥すると、彼はふんと鼻を鳴らした。
がさがさと柔らかな若葉を踏み荒らしながら、桃色の花びらを散らしながら、彼は脱出する為の出口を探し出す。
暖かな陽気、色とりどりの花、澄み渡る青空。
誰にとっても素晴らしい場所だろう、一般的に見れば。
彼は蟀谷に青筋を立てながら、楽園を探す。
こんな場所は、我が恋人には相応しくない。
夜の闇の中、か細い星の光よりも尚静かに笑うあの人。「吸血鬼」と呼ばれるあいつの為の楽園を探さなければ。
4/30/2023, 5:56:35 PM