作家志望の高校生

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「はい。」
「え?」
突然、目の前に小包みが押し付けられる。視界は淡い水色の袋で覆われ、何も見えなくなってしまった。
「早いけどあげる。クリスマス。」
コイツとはもう十年近い付き合いだが、クリスマスプレゼントなんて一度も貰ったことがない。余計怪しいので受け取らず訝しんでいると、急かすように彼は更に強く小包みを押し付けてきた。このままでは鼻が潰されかねないので受け取り、無遠慮にそのまま開けてみる。中身は、太めのチェーンブレスレットだった。
「……いや嬉しいけど……急に何?」
「別に。僕らももう高校生だし、バイト代とか入ったから。あげてみようかなって。」
スカスカの理由にじとりとした目を向けつつ、そういうことならと素直に受け取った。デザインもシンプルで俺好みだし、きっとそれなりに考えてくれたのだろう。
中身を見ても俺が何も言わないと、彼はなぜか少しだけ焦れたような、どろりとした目を一瞬向けてきた。それが余計不可解で呆然としていると、けろりと普段通り、柔和で人好きのする笑みを浮かべて
「なに、嬉しくなさそうじゃん?」
「……いや、嬉しいって。さんきゅ。」
小包みを鞄にしまい込み、その話はそこで終わった。俺もお返し用意したほうがいいかな、なんて、この時はまだ、考えていた。
翌日から、俺はせっかくなので貰ったブレスレットを着けて学校に行くようになった。そこそこ賢い学校なので、校則も比較的緩い。このくらいは見逃してくれるだろう。
男子はノータッチだったが、普段俺はアクセサリーなんてほとんど着けないから、変化に敏感な女子には物珍しく思われたらしい。休み時間、数人の女子が俺の机に集ってきた。
「ね、珍しいじゃん。なんで急に?」
「ああ、これ……貰った。」
一瞬、場の空気が凍り付いた気がした。互いに顔を見合わせ、ひそひそと何か話し合っている。
「……ちなみに、誰から……?」
「アイツ。」
生徒会の仕事を熟しているらしい彼を指差すと、彼女達の囁く声は更に大きくなった。
「……あの、ソレの意味……」
「え、意味とかあんの?」
女子達は気まずそうにしながら、おずおずとスマホの画面を見せてくる。
数秒後、俺は彼の方をガバリと見てゾッとした。
いつも通りの柔和な笑み。しかし、その目は笑っていない。
手元で揺れる鎖は、着けてきた時よりも重く、絡み付いてくるように感じられた、

テーマ:贈り物の中身

12/3/2025, 7:49:00 AM