びゅうびゅうと風が扉を叩く音がする。
ガラス窓がガタガタと揺れる。
みぞれ混じりの雪が外の景色を見えなくする。
「荒れてるね」
呟いて、冷めてしまった缶コーヒーを飲み干した。
はぁ、と吐く息は部屋の中にいても白い。
つけたばかりのストーブはまだ部屋も、体も、あたためてはくれなかった。
「明日は積もるかもな」
「そうだね」
明日も気温は低いままだという。
風は収まるそうだから、きっと朝には一面銀世界になっているだろう。
「·····やだやだ」
小さく呟いて窓の向こうを見つめる。
不意に、温もりを感じた。
「こうすりゃ少しは温かいだろ」
「――そうだね」
背中越しに感じるあたたかさは、ぽこりと浮かんだ嫌な記憶を押し戻してくれた。
「熱燗飲みたい」
「分かった」
声と共に離れた温もりが、少し寂しい。
はぁ、と吐く息はまだ白いままだった。
END
「白い吐息」
12/7/2025, 5:13:51 PM