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12/27「手ぶくろ」

「寒い」
 口をとがらせて、僕の手袋に手をよじよじとねじ込んでくる。
「入らんて」
「じゃぁ脱げ」
「横暴」
「だって左右履いてんじゃん! 2つあるじゃん!」
「いや2つで1セットでしょうよ手袋ってものは」
「雪見だいふくだって2つで1セットだけど2人で分けるもんだろー?」
「偏見」
「そんなことない!」
「分けてくれたことないくせに」
「ぐぬっ」
 大人しくなった。ふふっと笑う。
「しょうがないな」
 右の手袋を脱いで渡し、空いた右手で手を繋いで、コートのポケットに入れてやる。
「え。これ恋人同士がやるやつじゃん」
「違うの?」
「違わない。でもさ、」
 手をスポンと抜き取られる。腕を引っ張られ、後ろから回して組んだ。
「こっちの方があったかい」

(所要時間:8分)



12/26「変わらないものはない」

 クリスマスが過ぎ、年の瀬が来る。今年も世の中は目まぐるしく変わった。変わらないものがあるとすれば、俺のくたびれた生活ぐらいだ。
 長い溜息をつくと、LINEの呼び出し音が鳴った。高校の時の憧れだった先輩からだ。
「年末年始久しぶりに戻るんだけど、どうよ? 会わない?」
「あ、いいっすね。丁度暇してます」
「よっしゃ。積もる話もあるからさ、久々に飲みながら長話しようぜ」
「だったら俺んちでいいですよ。全然引っ越してないですし。掃除しときます」
「いいの? じゃあまた後で連絡するわ」
 通話が切れる。いつもと変わらない年末と思っていたが、少しはいい年になりそうな気がしてきた。

(所要時間:9分)

12/28/2023, 1:56:03 AM