蒼月の茜雲

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テーマ“もう一つの物語”

愛する人と出会い
結婚し、もう50年が経過した。
子宝にも恵まれ
その子どもたちも親になり
みんな幸せそうにしている。

まあ、見せない苦労は
当然あると思うけれど
それでも、私たちに見せる姿は
幸せそうなので
幸せなのだと思う事にしている。

妻は、私の横で微笑み
私はその横で花を眺めている。

日差しが暖かく
うつらうつらと眠りについた。

ー妻サイドー

50年連れ添った主人が
隣で横になっている。
本人は知らないけれど
彼の寿命はそろそろ尽きる。

先日、医師に
もって後、数日だと告げられた。
もう、手の施しようが無いのだと。
最近、眠る時間が増えている。

離れた場所に住む
子どもたちに、頻繁に顔を出すように頼み
幸せそうな姿を見せて欲しいと頼んでいる。
「見てください。貴方が好きな花が今年も咲きましたよ」
そう声をかけているけれど
聴こえていないだろう。

辛くも、苦しくもあったが
私は、なるべく笑顔で話し掛けた。
主人が、花に目を向ける。

そうして、春の暖かな日
主人は、主人が好きな花を最期に見て
天へ昇っていった。

ありがとう、愛しき人へ。


【もう一つの物語って、こういう意味でも良いのだろうか…】

10/29/2022, 12:01:38 PM