暁星

Open App

「あなたの人生です、好きなように生きていいのですよ」

そう言われると、困ってしまう。
私はアイデンティティがない、それは出口のない迷路を彷徨っているようなもの。


「では、好きなものはありますか?」

どの程度のことなのか?
好きなものはあるが、ライフワークと呼べない。
ただ私はその世界に潜って、そこの住人でいたいのかもしれない。


「充実した時間を過ごせていますね」

本当にそうだろうか?
自分にとって価値がある時間は、他者にとって興味もなく、無駄であるかもしれない。


「あなたの人生ですよ、あなた以外のことは一度忘れましょう」

忘れていいのか、考えたことがなかった。
大したことではない、でも私にとっては大切なこと。
このまま守り続けて、育てられるだろうか。


「その気持ちを忘れないで下さいね、いまのあなたはとても素敵ですよ」

私の心の何かが溶け出す、それとと同時に頬に伝うものを感じた。



『つまらないことでも』

8/5/2023, 9:52:19 AM