アキヤ

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最初は小さな小さな炎だった。
誰も気づかないほどひっそりと、自分ですらも気づけないほどの小さな想いが心に芽吹いた。
――あの人と喋ってみたい。
小さな好奇心に突き動かされて、気がつけば、私は先の見えない霧の中へと足を踏み入れていた。
彼の言動に心が揺さぶられて、一挙手一投足にまで意味を見出そうとしていて。
けれども彼は私のそんな想いに気づくはずがない。
彼は当たり前のように私の前を通り過ぎる。それがどれほど私の心を乱しているのかも知らないで。

「きっと可愛いと思うよ」

彼はそんな言葉も忘れているだろう。
私が長年連れ添ってきたロングヘアに別れを告げて、バッサリとショートカットにしてきた日。彼は驚きで目を丸めていた。

「その髪、どうしたの?」

とっても不思議そうに聞く彼の顔を見て、私は確信した。
あぁ、この想いは一方通行なんだと。

No.6【心の灯火】

9/2/2024, 10:48:59 AM