こんな夢を見た。最近仲良くなった友人が、見せたいものがあると家に誘ってきた。
「ほら、これだよ」
彼女は、棚から丸い小瓶を持ってきた。中には、ミニチュアサイズの植物と砂利が敷いてある。
「可愛いでしょ?テラリウムって言うんだけど。あたし、これに最近ハマってて」
小瓶の中の世界に見入っていると、彼女はまた棚から瓶を持ってきた。
「まだ、いっぱいあるんだ。特別に見ていいよ」
彼女は、笑顔でテーブルにテラリウムの瓶を置いていく。一つ一つ手に取り、眺める。どれもこれも世界観があり、眺めるだけでも楽しい。
「気に入ったなら、あなたもテラリウムやらない?同じ趣味の人、中々いなくてさ。良いでしょ?あたしが教えてあげるから」
私が返事する前に彼女は滔々とテラリウムの良さを語り始めた。彼女はテラリウムの小瓶の一つを摘み、うっとりと見つめながら話している。相槌を打ちながら、テラリウムの瓶が飾られていた棚に私は目を惹かれていた。棚にポツンと飾られた大きな水槽。重かったのか、彼女は持ってこなかった。植物が見えるので、あれもテラリウムなんだろう。あの大きな水槽の中には、どんな世界が広がっているんだろう。気になって仕方ない。気も漫ろで相槌が適当になった私に、彼女は首を傾げた。
「ねえ、何か気になることでもあるの?」
「え?まあ、うん。あのさ、あの大きな水槽もテラリウムなの?」
指差すと彼女は棚の方に振り返り、渋い顔になった。
「あー、そうだよ。でも、あれはテラリウム始めたての時に大きく作りすぎて失敗したんだ。あたしは、小さい方が好みだから」
「へえー。大きいって言っても、テラリウムなんでしょ?私は見たいな。見てもいい?」
すると、ますます彼女の顔は曇った。
「えー?恥ずかしいから、見なくていいよ」
彼女の作品を見る限り、彼女のセンスはとても良い。失敗したといっても、きっと良さはあるはずだ。彼女が止めるのも聞かず、私は棚の大きな水槽を覗き込む。瞬間、私は息を呑んだ。水槽の中には、楽園が広がっていた。青空に映える一面に広がる白い小花の花畑、大きなリンゴの木、白を基調にしたテーブルとイス、それから…。
「……人間?」
ミニチュアサイズの少年少女たちが真っ白な服を着て、追いかけっこをしていた。
「これね、最初は花が咲くタイプのコケだけ入れてたんだ。水槽の背景が青空だったから、青空に一面の花畑ってコンセプトでね。でもあまりにも殺風景だったから、失敗だって思って水やりだけして放置してたの。そしたら、いつの間にかこうなってた」
彼女はため息をついた。それから、いつの間にか持っていた霧吹きで水槽の中に水を吹きかけた。すると、きゃあ、と声を上げ少年少女たちは慌てて建物の中に駆け込んで行く。
「あたしが創り上げたかった世界を、よく分からない奴らに完成させられるとは思ってなかったよ」
彼女は屈辱だと言わんばかりに、底に水溜まりが出来るほど水を吹きかけ続けていた。
5/1/2026, 7:54:47 AM