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 あの子は綺麗で、その子は賢くて、君は強くて―――他人が持つ才能が羨ましい。私には、何にもない。綺麗でも、賢くも、強くも……その他、絵が描けるとか、そんな才能を、私は持ち合わせてない。少なくとも、私視点からは。
 わかっている。これが贅沢のようなものであることは。地震が起きたりして家がなくなったり、近くの人が死んだりなんてしてない私は、十分幸せなのだろう。十分恵まれた方なのだろう。
 それでも望んでしまうのが―――ないものねだりをしてしまうのが、おそらく人間の性だ。自分の持っていないものがどうしようもなく輝かしいように見えて、自分の持っているものが粗末なように見えてしまう。

「苦しい」

 自分にないものを見てしまうのが、どうしようもなく苦しい。それを羨ましいと、それが欲しいと、ないものねだりをしてしまうのがどうしようもなく苦しい。でも生きるために目は閉じれない。生きるために耳は塞げない。ニュースも、ラジオも、新聞も、SNSも。生きるということは、他人の素晴らしい功績を見聞きすることになるのだ。絶対に知ることになるのだ。
 生きるのをやめれば、確かにそんなことはないけど―――私は、死ぬのも怖い。何もできない。

「……苦しい」

 いつかこの苦しさから解放される日が来るのだろうか。何もない私が、ないものねだりをしないことをやめられるのだろうか。諦めるって、どうするのだろう。どうしようもなく欲しくなるのに。ないものねだりなんてやめたいのに、やめれないから。

「―――苦しい」

 今日も私は、誰かの才能に嫉妬して、ないものねだりをして、勝手に苦しんでいる。

3/26/2026, 10:32:15 PM