遮光カーテンで光を遮ることができても、音までは遮ることはできなかった。
突如、激しく窓を叩きつけてきた雨音は、微睡んでいた俺の意識をはっきりとさせる。
隣で眠っていた彼女も同様だったらしく、体を起こして遠慮がちにカーテンを捲っていた。
そのまま食い入るように窓を見つめているから、我慢ならずに声をかける。
「そんな格好でカーテン開けないでください」
「え?」
体を起こす気力はなく、彼女の背骨を指で辿る。
小さく皮膚を震わせ、反射的にカーテンを掴んでいた手を離して振り返った。
「ねえ。やめて」
「なら、今の自分の格好を自覚してください」
シンプルこそ彼女の美しさを際立たせるが、さすがに上裸はやりすぎである。
外はまだ暗く、部屋の明かりは常夜灯にしたままだ。
いくら雨がモザイクの役割を担っているとはいえ、しどけない姿を晒した女性が窓際にいることくらいは視認できるだろう。
例えここがマンションの高層階だとしても、だ。
不用心にも程がある。
「脱がしたのはそっちのくせに」
きまり悪そうにする彼女に、今度は俺が口を閉ざす。
彼女を求めて散々好き勝手したのはその通りなのだが、下着やシャツを羽織ることなくタオルケットの中に潜り込んでくるのはどういう魂胆だ。
脇の下におでこをグリグリと押し当てて照れくささをごまかすくらいなら、きちんと服を着ればいいのに。
わざとらしく彼女の小さな背中を叩き、ギブアップした。
「ちょ、これ、さすがにくすぐったいです」
「ふふん」
勝ち誇って得意気に鼻を鳴らした彼女につられて、俺も笑ってしまうのだった。
『カーテン』
6/30/2025, 8:36:52 PM