堕なの。

Open App

◤君と私の夢の街◢

煌びやかなネオンが街を彩る。その中でふらふらと歩く私は二日酔い三徹目の社会人。二日酔いにも関わらず今日も接待に付き合わされていた。

「まだまだ行けるよな」

上司の煽る声を朦朧とした頭で聞く。視界は定まらず、もう一切飲めないことは明らかである。

「よし、二軒目は」
「すみません、俺は抜けさせていただきます」

そんな私の神の救いになってくれたのは相手社の人だった。彼も新人だが私とは違って優秀な人でよく上司に引き合いに出されている。

「そうか、じゃあその子も送ってやれ」
「まだまだ飲めるだろう?」

相手社の社長が私が帰れるように取り計ろうとしているが、うちの上司はそうなこと許さない。

「この子だって最後おじさんに送られるより若い子同士の方が楽だろ。お前の相手は俺がしてやる」

うちの上司は丸め込まれ、私は一足先に帰れることとなった。

「すみません。ありがとうございます」
「いえいえ、そんなことないですよ」

涼し気な笑顔を浮かべる彼は会社でさぞモテていることだろう。私なんかが隣にいてはファンに殺されてしまう。

「あの、一人で帰れま、、、」
「送ってくよ」

説得の余地も与えられず、大人しく送られることとなった。しかし、ほとんど交流のない人と二人きりで無言の空間が続くのはキツいものがある。

「ペットは飼っていますか?」
「ペット?」
「はい。俺は犬を飼いたいと思ってるんですけどマンションがペットNGで」
「そういうことありますよね。私も昔は猫を飼っていたんですけど今のアパートペットNGなんですよ。今でもずっと飼いたいなとは思っていて」

脈絡のない話だったがないよりはマシで、さっきの気まずい空気もどこかへ霧散していった。

「なるほど。じゃあ理想の生活はペットと暮らすことですか?」
「理想の生活ですか。そうですね。好きな人と二人っきりで思いっきり愛されたいです。辛いことなんて何もなくて。そんな世界で」
「いいですね。俺もそんな世界がいいです」
「好きな人がいたんですよ。悠斗って名前の男の子なんですけど、すっごく優しくて」
「いいですね」

ニコリと笑った彼の笑顔が視界を埋める。それと同時に体から力が抜けて意識も黒く塗りつぶされていく。

「飲み過ぎですよ。他の男なら襲われてます。でも大丈夫。俺があなたの願いを全て叶えてあげますから」

ただ、彼の笑顔を怖いと思った。でも何にも抗えなくて意識は落ちた。

☆。.:*・゜

「大好きですよ」

俺は彼女の体を抱き上げた。しかし、俺を好きと言ってくれるなんて嬉しい限りだ。随分昔のことだと言うのに彼女の頭にいるというのは嬉しい。

「でも俺のこと気づいてくれなかったからな。俺は一目で気づいたのに」

お仕置だと心の中で微笑みながら俺の家に向かった。もう一生離さないと誓って。


テーマ:理想郷

10/31/2023, 10:26:31 PM