えむ

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“季節は次々死んでいく”

その歌詞を少し口遊む
夏という灼熱にもふわりと秋の涼風が流れる
太陽の光も何処か優しげに感じる
まだ夏のような暑さを感じなくもないが
でも秋は確実に傍に寄り添ってる

“今年の夏”は死んでいく

“来年の夏”はあくまで“来年の夏”であって
“今年の夏”は永遠に帰ってこないのだ
時の流れというのは残酷である
どんなに輝かしい青春も
どんなに苦しんだ感情も
流れれば全て“過去”で終わる
その全てが虚しくて悲しくなる

いずれ“今年の秋”も死んでいくだろう

それと同時に“今日の自分”も今日で死ぬ
“明日の自分”は“明日の自分”で
2025年10月15日の自分は今日で死ぬのだ
だからたまにご褒美を買う
些細であり仕方の無い現象を前に
“今日の自分”は死ぬのだと浮かんだ時に

今日は久しぶりに“梨”を買った

それは瑞々しくてほんのり甘くて爽やかで
とても美味しかった
生きてて良かったと小さなご褒美で実感する
まだ“今日の自分”と死別するには些か早いが
忘れる前に一言だけ呟いておく
『さようなら』

“今日の自分”


題名:梨
〜あとがき〜
秋の涼しさを感じるようになってきましたね
場所によっては雪も降るとか?降らないとか?
なぁんて思いながらも少しだけ重ための短い作品を落としていきます
“今日の自分”はまだまだ始まったばかりですが
皆様の“今日の自分”が少しだけ幸せになれるよう
些細なご褒美を買ってみるのは如何でしょうか?

10/14/2025, 10:23:31 PM