「星空の下で」
「ドォォォーン」
星空の夜の下の静かな村に一つの轟音が響き渡る。
その轟音は眠りについていた住人を叩き起こす。
ある村人は驚き、ある村人はまたかとため息をつく。
「これがこの村の呪いといわれているやつか!とうとう見れたぞ!」
この男の名は船橋。
オカルト好きが過ぎていて、一度気になるとすぐに行動に移す超アクティブ人間である。
「こうしちゃいられない。カメラと、スマホと、メモ帳と、ペンと…」
散らかった部屋から必要なものを粗探しし、すぐに玄関を出た。
「とこだー」
玄関を出るとあたりをキョロキョロと見回し、音の発生源を探る。
すると、一瞬怪物と見間違えしまうほど凄まじい煙が、星空が広がる暗澹へと昇っていた。
「あそこか!思ったより近い場所に落下したらしいな。道理で爆音がしたわけだ。本当に危険と隣り合わせの村だな。なのにこの村出身の人は村を離れない。気になる!」
すぐさま落下地点へ疾走した。
探究心と知的好奇心により船橋は気づいていなかったが船橋は寝間着のまま外へ出ていた。
「はぁ、はぁ、あれ?さっきまですごかった煙がない」
落下した場所に来ていたはずがそこには何も無かった。
どよめいていたはずの村人たちもなぜが黙ったままだ。
「すみません。ここに何か落下しませんでした?」
「んっ?最近ここに越してきた若造か?まぁ、気にすることはない。よくあることだ。」
気にするな?
絶対におかしいはずだ。
さっきまでものすごい存在感を放っていた煙が消えているのはおかしい。
それに、あそこまでの爆音を放っていたはずなのに落下地点と思われる場所には落下した痕跡がない。
なぜだ?
この老人は何かを隠している。
この老人だけでなくここの住人は隠している。
「おかしくないですか?さっきまでの煙はなんですか?」
「そうか、そんなに気になるのか若造」
周りの住人はこちらを向いていたが、身を翻し何もなかったかのようにそれぞれの自宅へ帰っていった。
「はい!気になります」
老人は隠している秘密について喋りそうな雰囲気をかもし出しているので、すかさず胸ポケットからメモ帳とペンを取り出す。
「ついてくるんだ、若造」
そう言われ、すこしの間老人の背を追っていくと村の端にある村長の家に着いた。
「ここは村長の家ですか?そうなるとあなたが星降の村の村長ですか?」
「そうだ、村長の家にすら挨拶に来ない世間知らずな若造が最近越してきてなぁ」
「すみません…」
村長は扉を開けると接客用の椅子に座りこちらへ来いと手招きをしてきた。
「それで早速ですが先程の件について良いですか?」
老人は苦虫を噛み潰したような顔をしてこちらを見ている。
「この話をすれば若造はここに越してきたことを後悔することになるぞ」
「良いんです」
船橋は知的好奇心を抑えられずにいる。
「そういえば何故若造はここにきたんだ?」
「この村では星が降ってくるという噂を聞いて来ました」
「つまり好奇心だけでこの村に来たということか?」
「はい。それよりも早く教えてください。後悔しても良いんです」
船橋に後悔という文字はなかった。
「そうか。それならば言おう。」
老人は一息置いて。
「この村は文字通り星空の時、星が降る。星が降る時には共通点がありそれは人が消える。この村の誰かが無差別に消えるんだ。だからこの村の人々はいつ自分が消えてしまうのかといつもビクビクして日々を過ごしている」
「なるほど。それではいつからその現象が起き始めたのですか?」
「昔の話になるが村のある子供がよく村の隅にある神社で遊んでいた。そこは森の奥深くに建立されていたので子供らにとっては秘密基地感覚だったのだ。そこまでならいいのだが、ある一人の子供が本殿の中に入ろうとみんなに提案した。それが呪いの始まりだった。本殿の中に入ったある子供が中にある神仏を倒して壊してしまった。そこからだ」
「なるほど。つまりこの呪いは神の裁きということですか?」
「そういうことだ若造。わかったんならさっさと帰れ」
「あなたですね?」
「な、なんだ?」
「本殿に侵入し、神仏を壊したのは」
老人はただコクリと頷くだけだった。
4/6/2024, 9:11:05 AM