大海原を進んでいる。
どこを見ても、どこまで行っても、曇天だ。
どんよりしている訳でもなく、太陽が透けた嫌に眩しい雲。
マストの日陰に逃げて、方向感覚が狂わないよう舵を握る。
船が揺れる。海賊船のような木造で、
そのくせただ平凡な自分が乗っているだけの船。
形ばかり立派で、中身はない。
縄が軋む音が聞こえる。まだ錨は降ろせない。
自分が何処辿り着くのかなど見当がつかない。
なにせ地図がないのだから。
昔は持っていた気がする。夢見る宝の地図を。
一体、何処で失くし、諦めたのか。
騒めく波に持っていかれぬよう、
舵を一方向へと取り続ける。
地図がなくとも、自分の道が分からなくとも。
ただ真っ直ぐ、ひたすらに進み続ければ。
きっといつか、どこかの海の片隅で、
光芒がかかる場所へと辿り着けるはずだから。
だから、まだ錨は降ろさない。
「一筋の光」 白米おこめ
11/5/2024, 12:01:57 PM