コーヒーが冷めないうちに
私がカフェを好きになったのは、ポニーテールのよく似合う店員さんと仲良くなってからだと思う。
ある日、カフェで私が小説を読んでいると、思わずといったように声をかけられた。私が読んでいたのは素朴な印象の恋愛小説で、彼女も丁度最近読んだらしい。そんな偶然をきっかけに、あまりお客さんの来ない静かなカフェで、私たちが同い年くらいだったことも相まって私たちはすぐに仲良くなった。
いつもついつい話し込んでしまって、そんなときに彼女は少し慌てながら言う。
「コーヒーが冷めないうちに!」
今日も同じように言ってとたたと駆けていく彼女に、思わず声を出して笑ってしまうのをこらえて、頑張ってねとゆるく手を振って見送る。こみ上げてくるおかしさを代弁するかのように、コーヒーカップからカラリと氷の溶ける音がした。
9/26/2025, 12:58:08 PM