君が、君こそが、私が隠した鍵!
君が「隠した鍵」なのだ!
なんてトンチを思いついたものの、物語として落とし込むには至らなかった物書きです。
今回はこんなおはなしをご用意しました。
最近最近のおはなしです。
都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人間に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く住んでおりまして、
そのうち末っ子の子狐は、美味しいものが大好き!
最近、稲荷狐の見習いとして、
正式に、美しい、不思議な名前を貰いました。
でも子狐、まだまだ小ちゃい子供なので、
自分が貰った漢字ばっかりの名前
【奇鍵守美食銀杏狐】
(くし、かぎもり・みけ の イチョウぎつね)
が読めません!!
「不思議な、鍵守と良き食物の、イチョウ狐」といった意味の名前なのですが、
しゃーないのです、子狐は、「子狐」なのです。
だけど「鍵守」の名前に相応しく、
コンコン子狐、稲荷狐の四宝のうち、鍵の宝物を授かりましたので、
取り敢えず、自分は鍵の稲荷狐として認められたのだとは、一応、いちおう、理解しておる模様。
「かぎ!かぎ!」
コンコン子狐、稲荷の不思議な鍵の使い方を、そこそこ段々、学習してきました。
「かぎ!かぎ!」
稲荷の鍵の、不思議なチカラをもってすれば、
あらゆる宝物の蔵、あらゆる豊穣の箱、あらゆる願いの門の鍵が、稲荷狐の名のもとに開かれます。
今日は子狐、美味好き同志の管理局員・ドワーフホトに、稲荷狐の鍵を自慢したくて、
ドワーフホトが仕事をしている職場にトテトテ!
尻尾振って、狐耳ペタリして、お目々なんて幸福でキラキラさせながら、
歩いては、行ったのですが。
「いいにおい」
ドワーフホトが居るであろう場所を、ドワーフホトの魂の匂いを辿って辿って、探しておると、
コンコン子狐、道中で管理局内の隠しキッチンを、ひとつふたつ、察知してしまいまして。
「いいにおい、いいにおい!」
というのも管理局の壁のあたりから、ご馳走を出し入れした形跡の香りがするのです。
きっと柿です。柿のカプレーゼです。
あるいは柿のクリームタルトです。
「かき、かき!」
コンコン子狐は狐なので、柿が大好き!
野生の狐も、甘い柿を見つけると、しゃくしゃく。食べることがあるのです。
ここでお題回収。
「かぎ、」
どこかに、鍵があるはずだ!
コンコン子狐、壁の向こうに隠された隠しキッチンのドアを、そのドアのロックを探して、
くんくん、くんくん!タシタシタシ!
匂いをかいで、前足で連打して、歩き回ります。
「かぎ!かぎ!」
ああ、どこかの誰かさん!
君が隠した錠前は、君が隠した鍵は、どこだ!
コンコン子狐、狐の本能でもって、
匂いを辿ってくるくるくる!
狐の執着でコンコン子狐、鍵の場所を特定して、
とてとて、ちてちて!難なく隠しキッチンの中へ。
「かき、」
隠しキッチンには、美味しそうな食材がいっぱい!
どうやら温かいオーブンの中で、
柿ではなく、牡蠣も、チーズだのバターだのと一緒に焼かれておるようです。
「かき!」
ここで待っていれば、美味が完成するのだ!
コンコン子狐はオーブンの前で、出待ちします。
「まだかな。まだかな」
子狐のテンションはマックスです。
子狐の尻尾は、高速回転しています。
このご馳走を、美味探求の同志・ドワーフホトと一緒に食べるのは、とても幸福なことでしょう。
「かき、かき!」
君が隠した牡蠣は、子狐が頂く!
コンコン子狐はご馳走が完成するのを、
ずっと、ずーっと、待っておったとさ。
……ところでこの牡蠣誰がつくったんでしょうね?
(お題と無関係のため以下略)
11/25/2025, 9:59:23 AM