Shamrock / 村雨

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[※hrak二次創作/A成代/FGO×hrak]

《諸注意》
※最早別人(キャラ崩壊)/型月産A(中立・中庸)/尻切れトンボ/リハビリ品/


※嫌な予感がしたら[次の作品]をタップ推奨


[ただひとりの君へ]

作業BGM:『D.E.C.O.*.2.7/罪iとi罰(リメイクVer)』


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 ──お前が生きていたのなら、どんな大人になったのだろう。


 今は遠い冬の夜。焦土と化した街でお前は他の人間と同じように、目の前で骨も残さずに息絶えた。
 伸ばした指先に自分と同じ白く細い髪の感触は無く、触れた瞬間に灰となって崩れ落ちた。病弱故に青白い頬も、温度を伝えるよりも先にはらはらと撫でた通りに輪郭を無くしていった。自分とは違う翡翠の瞳は濁りきり、片方が溶けて眼孔から零れ落ちて原型を留めていなかった。双子なのに、自分よりも少しだけ小さい身体だった。

 ──享年五歳。
 片割れは、弟は、たった五歳で命を落とした。苦しくはなかっただろうか。熱くはなかっただろうか。痛くはなかっただろうか。せめて痛みを感じずに済んでいたら良い、などと、"災害"で焼け落ちて無くなった記憶から、僅かに残った片割れのことを掘り返す。
 ……あれから何年、何十年経っても、そう思わずにはいられなかった。

 世界が焼却されて、必死に取り戻して。そうしてまた、漂白されて。
 血反吐を吐きつつ、悪夢に魘されながらも走り切った人生を思い出す。
 ──赤錆色の髪に金の瞳の少女と、黒髪に碧い瞳の少年。
 遠い日に、一方的に別れてしまった人達と同じ色を持つ、よく分からないまま連れてこられただけの、魔術なんて知らない"双子"の高校生。
 そして施設で育ち外の世界を全く知らない、"そうあるべくして作られた"薄紫色の髪の少女。
 多少戦闘経験があった自分が同行していたとはいえ、血生臭いものとは縁遠い生活を送っていた彼等を戦場へ行かせなくてはいけなかったことが酷く心苦しかった。繰り返すたびに嫌な順応をしていく姿に、かつて慕っていたどこぞの誰かを重ねて心臓が軋む心地になったことは一度や二度じゃない。
 ──『世界を取り戻す』なんて酷く重い役目を、あの場に彼等しかいなかったとはいえ自分よりも歳の若い子供に背負わせたことが、未だに、どうにも、心残りだった。



 ──お前が生きていたのなら、どんな大人になったのかな。
 お前も大概お人好しだから、『正義の味方』なんてものに憧れて、その道を目指すのかな。別にそれでも良いけど、目指した人の成れの果てを見た側からすると、心配する気持ちの方が強くなるのは許して欲しいよ。だって唯一の肉親だから、誰かのために自分の心を切り売りするよりも幸せになって自分の人生を歩んでる姿が見たいって思うじゃないか。

 でも、おまえはもう、どこにもいないんだね。





 二度目の生を受けて、隣を見たときにお前にそっくりな子供がいたんだよ。最初はお前だと思ったんだ。でも何でかな、すぐに違うって思って思わず蹴り飛ばしてしまったんだよ。そんなつもりは、一切なかったのに。
 慌ててその片割れを抱え上げて、ようやく自分がおかしいことに気が付いたんだ。腕の中の子供は恐ろしく細くて小さいのに、自分はその子供よりも不自然なほどに大きかったから。まるで片割れの分の栄養まで横取りしたような有様で、自分でも気味が悪くて仕方なかった。
 普通に生きれるようになるまでいろいろ、本当にいろいろしたよ。きっと側から見たら後ろ指をさされるような悪事だってやってみせた。そうしないと生きてはいけなかったし、片割れを生かすことはできなかったから。時々お前と重ねてしまったせいか、お前の名前を自分の名前だと片割れが認識してしまって途方に暮れたし……正直、虚しかったよ。生きていたのだって惰性で、片割れがある程度自分で生きていけるようになったら密かに自害しようと思っていたのだから。


 ……けれど、多分最初から、生まれたときから間違えていたんだろうね。
 いつの間にか"俺"は世間から魔王なんて呼ばれていて、周りをシンパという名の"化け物"達が群がっていた。その中にはかつて"異能"を取り除いて欲しいと懇願してきた人間や過去に俺を"買った"狂人も複数人混じっていて、逃げ道はとうの昔に、丁寧に潰されていた。両手は既に夥しい血と罪で穢れていて、元に戻れる筈も無く。

 そうして気付けば数百年。誰かの異能──"個性"を騙し討ちの如く奪わされたせいで、今日の今日まで変わらぬ姿まま生かされている。
 老いて寿命で死ぬこともできず、護衛という名目で側を離れない狂人共のせいで自害もできず。頼みの綱は変質したらしい片割れの個性──"OFA"で幕を引いてもらうことだったが、それも狂人共の横槍で尽くOFAの継承者達は命を落としていった。……唯一俺の頭を潰し、横っ腹に個性を撃ち込まれながらも生存してみせたオールマイトも、いつその命が刈り取られてしまうか分からなかった。
 意識を取り戻したときの絶望感は凄まじかった。やっと幕を引けると、攻撃を喰らう寸前までオールマイトに拍手喝采を贈りたいくらいに内心舞い上がっていたものだから、余計に。
 いつになったら終われるのだろうか、などと意味の無い自問自答を繰り返しながら、遥か遠い過去に思いを馳せる。



 お前や、お前の仲間達はお前のことだと思っていたかもしれないけれど、俺が『自分の弟』だと思っているのはお前じゃないんだ。

 今も昔も、あの冬の日に、焼けた冬木で命を落とした片割れだけが────『ヨイチ』だけが、おれのおとうとなんだよ。







 ──お前が生きていたのなら、どんな大人になったのかな。
 ここまで堕ちた俺を、[殺して/救けて]くれたかな。
 それとも見捨てて離れて行くかな。
 今となっては答えは分からないし、どちらでも良いけど。



 どうしてかな、すごくおまえにあいたいよ。





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凄い久々の習作(※勢いだけで書きました)

余談として、この型月軸のA成主の名前は『言峰零治』としています。(ゼロに"おさめる"/ゼロに"なおす")
ついでにですが、

型月軸の弟→兄のことが大好き。両親からの暴力を覆い被さって庇ってくれたり、名前をくれたり、寂しいときや辛いときには手を握ってくれたから。兄にも名前を贈りたかったけどその前に聖杯の泥を被って燃え尽きて灰になってしまった。でももしかしたら肉体が無くなった今でも[星/兄]に追い付こうと足掻いているかもしれない。

という裏設定があったり無かったりしますが書ける気がしないので供養としてここに書いときますね()

いつか支部に投げる、かも(予定は未定)


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1/19/2025, 6:05:01 PM