saku

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暗がりの中でメチャクチャに走り回ってた。壁にぶつかったり転んだり、とにかくもう大騒ぎ。
叫び過ぎて声は涸れ、体は汗だく。
やっと蛍光塗料で描かれた矢印の先に「出口」の文字を見つけた。
その時背後からウォーッと唸り声を上げて、何か恐ろしいものの気配が近付いて来た。
私たちは振り返ることもできず、キャーキャー叫びながら(多分笑顔で)出口に向かって全速力で走った。

怖かったあ!でも面白かったね!
最後どんなのが追っかけて来たのか見た?見てない。やっぱ見ればよかった。無理無理!
あれバイトの人?そうじゃない?
本当に真っ暗闇で怖かったね。
どうする?もう一回行く?
えー私はいいよ。どうせなら別のとこに行きたいな。
私はもう一回行ってみる。今度こそバイトの人をやっつけてやるんだ。
そっか、じゃまた後でね。
うん、また後で合流しよう!

……
すっごく時間かかったけど、
やっと慣れたよ。
慣れたらここはそんなに暗くなかったし、怖い役してるバイトの人なんていなかった。
それで…それでね、私、この場所に夢中になりすぎてコロッと忘れてた。
待ち合わせしてたことも、出口の矢印が上を向いていたことも。




10/28/2023, 2:37:33 PM