細言

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『手放した時間』
僕は小説を読んでいた。休み時間、次の授業の準備を終えた後の、大体7分程度。
いつからだったろうか、友人とめっきり話さなくなった。孤独だったからだ。どれだけ話しても、親密さに欠けていて、話せば話すだけ孤独を感じた。だから距離を置いた。何もしないと、それはそれで辛かった。側から見ても孤独な人間にはなりたくない。だから小説を読んだ。
以前までは、まぁそれなりに仲も良かった。どこかでこいつとは合わないなと感じながらも、楽しんでいた。それがだんだんと募って、ぷつりと切れてしまった。話の輪に入ろうとしても誰も僕を見てくれない。僕から話を振っても軽く流される。あいつと話してる時は楽しそうなくせに。僕はこの感情を知っている。嫉妬だ。心底嫌いな奴に嫉妬している。無様だ。僕は無様な人間なのだ。死にたかった。
始令が鳴り響き、先生が教室に入ってくる。友人はコソコソと話しながら前を向く。僕は本を閉じる。共同体のようで、隔絶された世界のようだった。
以前までは、一緒に下校していた。まぁ今もしているが。ここ半月ほど、僕は下校時に口を開かなくなっていた。話しかけられないから。話しても取り合ってくれないから。友人と話すこと自体が億劫になっていた。
そんな日が続いて、学校に行きたく無くて、遅刻が増えていた。一限に間に合うくらいの中途半端な遅刻ばかりを積み重ねた。
ある日、他の友人が面接練習とかで、友人と2人きりで帰路に立った。
「お前最近おかしいよ。本読んでばっかりで話しかけづらいし。」
友人が言った。僕は、お前のせいだ。と心では吐き捨てた。
「誰も話してくれなくて、孤独だから本を読んでる」
暗い、地下鉄。駅のホームに反響するどこかを走る電車の揺れ。僕はこんなことを言うつもりはなかった。こいつだけには、弱みを見せたくなかった。嫌いだ。こいつは合わない。過去何度も思い知らされてきた。
それなのに、僕は吐いてしまった。弱みを、孤独を。
「お前メンヘラかよ。」
友人は軽くそう言った。酷い奴だ。僕が生々しく疼く傷口を見せてやったと言うのに、その言い種。でも、それ以上に、少し救われている自分に吐き気がした。

11/23/2025, 4:28:27 PM