小絲さなこ

Open App

「それって、どういうこと……」



「ずっとずっと友達だからね」

そんなことを、そんな目で言われたら、友達以上の関係になりたいなんて、言えやしない。

ずっとずっと友達。
その言葉に囚われて、動けなくなって十数年。
いまだに俺たちは友達だ。
住む街が変わっても、学生から社会人になっても。

その間、君に彼氏ができたことはない。
君はそれを嘆くけど、俺にとっては幸運でしかない。
だが、踏み込めないのは不幸でしかない。


「どうして彼氏出来ないんだろ。あたしそんなに女としての魅力無いのかな」

ぽつり。
呟いて視線を落とす君。

「そんなことないよ。むしろあり過ぎて……」

思わず口に出していて、口元を右手で隠す。


俺の顔を、君は見つめているのだろう。



────澄んだ瞳

7/30/2024, 4:03:26 PM