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 湧いて出てくる背徳感。自分の不幸が蜜の味。

 喉に落ちていく血の味と、自責に駆られる貴方の顔。

「大丈夫、貴方は何も悪くない。」

 そう言って抱きしめてあげたら縋るみたいに泣きついて、熱の残る右頬を「ごめん、ごめん」って撫でてくる。

 完璧で、優しくて、誰にも好かれる貴方の、誰にも言えない秘め事を、自分だけが知っている。

 焦燥感に煽られるまま、欲望の赴くまま。

 貴方が人間らしく居られるのは、俺の前だけでしょ?

 本当の貴方を知っているのは、俺だけだよね?

「俺……——が居ないと駄目なんだ。」

 震える声で絞り出したその言葉は、すぐ嗚咽に戻る。

 全身が内側から熱くなり、どうしようもなく愛おしい薄く骨っぽい貴方の身体を強く、強く抱きしめる。

「俺も、貴方が居ないと駄目なんです。」

 貴方が居ないと。

「俺たち、ほんと終わってますね。」

 誰が俺を罰してくれる?

「でも、それでいいじゃないですか。それで生きていけるなら。」

 誰が俺の為に苦しんでくれる?

 どうしようもない衝動を、俺だけに向けてほしい。

 劣等感も全部、ぶつけてほしい。

「……ごめんなさい、自分勝手で。」

 貴方の不幸が、蜜の味。

11/12/2023, 3:09:04 PM