ウツロ

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此処に来れば、何かがあるはずだった。
強い陽射しを耐え、青の境界線を目の前に立ち尽くす。煌めきが揺れているのにも関わらず、取り巻く空気はじっとりとした熱気を帯びたまま、動かない。匂いや音などの五感は遠く、まるで他人事のようだった。
此処には何もなかった。わかりきっていたことだった。
何の理由もないまま、半ば衝動的に向かったまで。単なる自己満足の結果は実に虚しく、視界を埋め尽くさんとする青に嘲笑われている。
己を包み込んだまま微動だにしない空気に、じわじわと蝕まれていく。そこかしこから雫が垂れるも、水分を補給する気にもなれず、暫しの間立ち尽くしていた。
動けなかった。動けずにいた。互いに、夏の風だった。

8/9/2025, 2:04:51 PM