ストック

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ある日、見知らぬ相手からLINEが届いた。

「✕✕課長は出張費を横領している」

✕✕課長とは私の上司だ。温厚で部下達への思いやりを忘れない人物だ。
課長に限ってそんなことはないだろう。
いったい誰がこんなイタズラを?

翌日、課長が解任された。経費の横領が発覚したそうだ。
あのLINEに書かれていた通りだった。

それからも毎日LINEは届いた。

「同僚の○○にはギャンブルで多額の借金がある」
「先輩の✕✕は学生時代に万引きで捕まったことがある」
「取引先担当の△△は委託料をピンハネしている」

他人の秘密が毎日LINEで送られてくる。
ゴシップ誌をでも読んでいるような感覚で、私はそれを楽しんでいた。

ある日、いつものようにLINEが届く。

「○○は浮気をしている」

「え?」
○○とは私の彼の名前だ。
信じられなかった。信じたくなかった。
しかし、彼を問いただすと浮気を認め、私たちは別れることになった。

傷心の私にまたLINEが届く。

「✕✕はSNSに私の悪口を書いている」

✕✕は私の親友だ。さっきまで一緒にいて私を励ましてくれた。
恐る恐る調べてみると「延々とグチを聞かされた。もううんざり」と書かれた彼女のSNSが見つかった。

見てしまったことを見なかったことにはできない。
これ以上見てしまったら、私は周囲の人間を信頼できなくなってしまうだろう。
私はそれ以来、そのLINEを開けなくなった。

9/2/2023, 7:31:55 AM