【お題:キャンドル】
今日も世界のどこかで
鎮魂のため
人々の痛みや嘆きに
寄り添うため
キャンドルに灯が
ともされているのだろう
ある年の1月
テレビから
トランペットの音が
聞こえてきた
目を向けると
阪神淡路大震災の
追悼集会の様子が
報じられていた
耳も心も 釘付けに
せずにはおかない
そんなトランペットの
音色だった
どこかで聴いたことのある
メロディだが
何という 歌なのかわからない
その旋律を 頭の中で
繰り返すうち
歌詞の一片が
記憶の中から
浮かび上がってきた
〈歌詞の引用ここから〉
輪になって 輪になって
かけて行ったよ
〈歌詞の引用ここまで〉
それを頼りに 調べてみると
團伊玖磨 作曲
江間章子 作詞
「花の街」
という歌だった
この歌詞が 書かれたのは
終戦 間もない頃
あたりは見渡す限り
一面の焼け野原
だったという
その 色のない街で
作詞者は 平和を思い
花に彩られた
美しい街を夢見て
詩を書いたという
そして 時は移り
その旋律は 鎮魂のため
トランペットで 奏でられた
奏者は
阪神淡路大震災の前日
神戸で演奏会を
開いていたというが
すんでのところで
被災を免れたそうだ
彼は 犠牲になった人々を
追悼したいと
毎年 演奏しているのだという
調べてみると
ある年の記事には
地震の発生時刻に合わせ
童謡「冬の夜」が
演奏されたと あった
凍てつく寒さの夜明け前
地震に遭い
こわさに身を
震わせていたであろう
子どもたちを思い
あのような
かなしいことが
子どもたちに
二度と起こらないよう
願いをこめてトランペットを
演奏したという
その記事を目にして
あることを思い出した
「花の街」が聞こえた
翌年の1月
あのトランペットの
音色が忘れられなかった
私の耳に 飛び込んできたのは
童謡「春が来た」だった
ほかでもない、
童謡こそが 演奏されたのは
鎮魂のため
また 子どもたちに
心と祈りを寄せる
そんな思いが あったからなのだ
けれど
いま世界はどうだろう
この今も
医療設備が破壊され
十分なケアを受けられない
子どもたちが
国外へ移送される
というニュースが
乾いた声で 流れている
11/20/2023, 9:58:46 AM