不条理
…この街は、変なルールがあった。
午前四時にオリーブオイルを塗ったグミを食べるな。
ガードレールの下を歩くな。
町外れの工場から出る煙を四分以上見るな。
いつもと変わらない通学路。
道にある掲示板や電柱には、決まっていつも変なルールが書いてある。
学校からのプリント。スーパーのチラシもそうだ。
いつからそうなのか、どうしてそうなのか、
誰も知らない。…いや、誰も気にしていないのだ。
ぼくだけを除いて。
通学には、ハッカクジラを使うべし。
標識を四回撫でるな。
紅茶の鳴き声を聞くな。
みんなそのバカげたルールを守っているらしい。
…ぼくには、クジラなんて見えないが。
馬鹿馬鹿しいったらありゃしない。ここ最近、そのルールのせいでマジメに生きる気力も湧かない。
前の席のヤツは、やけにとんがったボウシを被っている。…お陰で黒板が見えない。
どの先生も、ルールを破ったヤツがいないかいつも必死だ。 父さんも母さんもそう。 警察も、テレビの知らない人間共だってみんな、みんなそうだ。
……ルールを破ったら、どうなるんだ?
醤油差しの魚を逃がすな。
四丁目のカーブミラーを見るな。
時計の針を四本に増やすな。
気づいているのはぼくだけなんだ。
そう。ぼく、だけ…………
早朝、午前五時。
オリーブオイルと、グミを…………
3/19/2026, 9:48:15 AM