前回投稿分からの続き物。
世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織の空間管理課職員、ゴーレムつかいのボクっこトルネが、
焚き火の世話の途中で寝落ちして、焚き火を大きくし過ぎまして、
お気に入りのステンレス調理器具、メスティンを真っ黒クロスケのススまみれにしてしまいました。
「うぅ、ボクの、初めて買ったキャンプグッズ、初めて買ったメスティン……」
トルネは完全に意気消沈。
それでも、お気に入りのキャンプアイテムをススけたまんまにしておきたくなかったので、
キャンプを終えて下山した後、すぐ近くのキャンプ場の洗い場に寄り道しました。
「落ちるかな」
ちゃっ、ちゃっ。
試しに少量の水を付けてみますが、
かけた水が真っ黒になるだけで、なかなか全部が落ちる気配は、ありません。
「キレイにしてあげなくちゃ」
トルネは洗い場に、金属製の古典的かつ、アナログなタワシを見つけました。
これでゴシゴシ、ごしごし、一生懸命にこすれば、
きっと頑固なスス汚れだって……
「……」
はて、そんなにゴシゴシして大丈夫かしら。
そもそも何を使って洗うのが最適解なのかしら。
「よし!ツバメさんに聞きに行こう!」
…––「うーん、材質によりますね」
相棒ゴーレム、テキサスロングホーンに乗って、ボクっこトルネはキャンプ師匠、ツバメの部屋を5分くらいで見つけました。
というのもツバメ、トルネがキャンプグッズを洗おうとしていたキャンプ場で、上司のルリビタキと昼食をとっておったのです。
「まず、自分の持ち物の材質がステンレスか、アルミか、覚えておくことです」
全部俺の火で加熱殺菌じゃダメなのか?
ドラゴンのルリビタキがツッコミますと、ツバメはツバメで人差し指をふりふり。
加熱したって、ススは落ちないのです。
「ステンレス製にもアルミ製にも言えることは、
強くこすらないこと、可能なら煮沸すること、それからしっかり乾かすこと。
そして無理に全部の汚れを落とそうとしないこと」
「それだけですか?研磨剤とかは?洗うときの、テクニックとか、技術とか?」
「何もいらない。それだけです」
「何もいらないんですか?」
「何も。『強くこすらない』それひとつだけでも守れば、メスティンの寿命は伸びます」
「つよく、こすらない」
「そうです」
そう言うわりに、ツバメおまえ、灰を布につけるとか、米のとぎ汁でとか、アレコレするよな。
ドラゴンのルリビタキがまたツッコミます。
ツバメはツバメで人差し指をルリビタキに、ベッ。
それ以上言わせませんの精神です。
指になにか、薄若葉色のクリームが付いてて、
それをルリビタキがクンカクンカした瞬間、
ぎゃおん!ぎゃおお!
どったんばったん悶え始めましたが、
ツバメが何を指に付けてたのか、トルネには分かりませんでした。
「そうですね」
ツバメは言いました。
「あとで、一緒に道具の手入れをしましょう」
さあ、きみも温かい、デカフェコーヒーをどうぞ。
ツバメから受け取ったマグカップに、トルネがくちを付けますと、
キリッとした、しかしフルーティーな、
優しいコーヒーがトルネの喉を、潤しましたとさ。
4/21/2026, 6:40:02 AM