燈火

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【つまらないことでも】


思えば、君とはくだらない話ばかりしている気がする。
どこに猫の集会所があるとか、購買の人気商品とか。
すぐに忘れても困らないような、生産性のない話。
君とならどんな内容でも楽しめるのはなぜだろう。

実は私、男子が苦手なの。好きじゃない、が正しいかな。
わざわざからかいに来るし、口を開けば下ネタを言う。
頭の弱いお子さま、って感じで馬鹿みたい。
君もその一人だと思っていたけど、まったく違った。

どこか大人びていて、達観している君はかっこいい。
給食に好物が出るとはしゃぐ、子供っぽい一面もある。
そんなギャップにも好感を持てるほど特別だった。
でも、君だけが特別でないことは中学生になって知った。

冷静な人、客観的な人、もの静かな人も珍しくない。
そのなかでも、長く関わっている君は特に話しやすい。
色恋沙汰に敏感な年頃だったせいか、変な噂が流れた。
囃し立てられても君は変わらないから、私も変えない。

同じ高校に進学したのは偶然で、大学は別々になった。
それでも連絡を取り合い、たまに都合を合わせて遊んだ。
親しい人はたくさんいるけど、気を許せるのは君にだけ。
なんとなく人恋しく感じると君の声が聞きたくなる。

くだらない話ばかりなのは社会人になっても変わらない。
どこのお酒が美味しいとか、仕事や上司の愚痴とか。
覚えている価値のない、風みたいに吹いては消える話。
それが君のことなら、どんな内容でも忘れたくない。

『今度、暇な日ふくろうカフェ行かん?』君からの連絡。
『なんでふくろう?』その日の夕方、返事が来た。
『高校の時、腕に乗せたいって言ってたじゃん』
何年前の話? 些細なことなのに、君もよく覚えている。

8/4/2023, 6:01:41 PM