何でもないフリ
目が 合ったら終わりだ
何でもないフリをして 通り過ぎなければ
ならない
俺は、視線を前に固定し
何食わぬ顔で 人混みに紛れて そこを
通り過ぎた。
「あああーーー武 探してたんだよ!!
こっち こっち おーーい」
バカでかい 巨体の男が
俺の 名前をバカでかい声で呼んでいる
様に聞こえるが もちろん気のせいだ。
周りが ひそひそ 何か話しているが
迷惑な奴が いる者だと思い
俺は、歩調を変えず 校門へと 着実に
向かう。
あと一歩で 学校を出られる。
そう思い 少し 歩調を 無意識に
速めてしまったのが 良く無かった。
がしっと 長い腕が 俺の細腕を
むんずと摑む
「お~い武 さっきから 呼んでるのに
無視するなよ ひどいじゃねェか!」
「武とは どの武だ 言っておくが
この 学校に 武と言う名前は、
23人は、居る。お前は その
一人 一人と会話を 交わし
一人 一人の顔を確認したのか
もう一度 一人一人確認して
調べ直して来い」
「何言ってんだよ!武は、武だろう
俺の知っている武は、お前だけだせ
相澤 武(あいざわ・たけし)君」
と この男 俺を長年の 旧知の
友人みたいに 言っているが...
はっきり言っておくと
この男とは、昨日が初対面だ
なのに 生来の 幼馴染みみたいな
ノリで 話し掛けて来るとか
どういう神経をしてるんだ!!
と ツッコミたいが それをすると
さらに 面倒臭い事になる事が目に見えて
いるので抑える。
「あのぉ~離してくれない 痛いんだけど...」
「じゃあ 逃げない!!」
その男は、にっこりと 恐い笑顔で
俺の腕をさらに締め付ける。
俺は、諦める様にため息を吐き
「逃げない...」と呟く
周りが ひそひそと また騒ぎ出した。
「ねェあの大きい人 不良の...」
と 耳打ちして 低い声で喋り出す声が
うるさい
俺は、其奴の腕を握り返し
別方向へと 引っ張る。
「ちょっと 場所を変えよう!」
俺達は、体育館裏へと移動した。
「で....何の用?」
俺は、上目遣いで睨みながら
大きな巨体を見上げる。
そうすると 其奴は、ニカッと白い歯を
見せて笑い 握手を求める様に
大きな手を差し出した。
「は?」俺は、呆気にとられる。
すると其奴は、また俺の腕をむんずと掴み
俺の手を取り 本当に握手をした。
「いや~昨日のあんたの一発に惚れたね
俺と一緒に 天下を取らない?」
と 自分の頬に貼られている
絆創膏を指で 掻きながら
キラキラした目で訳の分からない事を言う
天下 なんだそれ 何時代? 三国志?
「何言ってんの あんた?」
「あれ?昨日の事覚えて無いの?
昨日 俺の頬を 思いっきり グーで
殴ったじゃん!!」
俺は気まずそうに目を逸らす。
「いや~まさか 同じ学校だなんて
気づか無かったよ! だってそんな
優等生みたいな 格好してんだもん
武チャン いやあ~武君が 同じ
学校だと 知ってたら 学校 真面目に
行ってたのになぁ!」
嘘つけ それに さっきから
チャンだの君だの馴れ馴れしい・・・
「弱味を握ったつもりか・・・」
俺は目線を鋭くし 其奴を睨む
「弱味 何ソレ? 俺は 武君と
友達に なりたいだけだって!!」
「嫌だって言ったら?」
「武君の 学校生活 一日中 付き纏う」
悪びれもせず其奴は言う
俺は じとーーっと其奴を睨み
ため息を吐く
「分かったよ!」
こうして 中学時代 不良だった俺は
高校では、優等生キャラで行こうと
高校デビューを果たしたのに...
高校の不良
「あっ俺の名前 まだ言って無かったね
槙洋介(まき.ようすけ)宜しくね!」に
捕まってしまった。
12/11/2023, 11:42:17 AM