ドアの開く音がして時計に目をやる。深夜一時になるところだった。ダイニングにやって来た弘樹がチラリとこちらを見てからキッチンに入る。
「お茶? 冷蔵庫にあるよ?」
「いい」
蛇口から注いだ水を半分ほど飲み干すと、
「まだ見てんのかよ」
と、オーバーに呆れた声を出した。
「うん」
ビールの缶を傾け、私は満面の笑みで返事をする。
目の前の画面では、ブカブカの長靴とレインコートを着た幼い子どもが、水色の傘を広げてニコニコしていた。
「だって可愛いんだもん。あんたも見なよ」
パソコンの位置をずらしてやると、弘樹は四歳の自分の様子を遠目に眺め、
「知ってるし」
と同じ皺を寄せて笑った。
『tiny love』
10/30/2025, 8:53:25 AM